利用者さんのお宅にて、ヘルパーが昼食を作ろうと冷蔵庫を開けると食材の残りがたくさん入っていました。
冷蔵庫に入っていた食材の内容を利用者さんに伝えると、なぜかしょんぼり……。
訪問介護の利用者さんは、よく「食べることしか楽しみがない」とおっしゃいます。
デイサービスに行ったり、家族が遊びに来たり、楽しいことはほかにもありそうですが、それ以外の日はつまらないのでついボヤいてしまうのかもしれません。
食べ物の話題が出ると、利用者さんは小さかった頃の“思い出の食事”の話をすることがあります。「戦争で何もなかった頃は、毎日がお粥かさつまいもだった」「お正月だけは白いご飯が食べられた」など、当時の大変さがうかがえます。
しかし、こちらの利用者さんは「配給があるときはよく母が味噌鍋を作ってくれて、兄弟でつついて食べた」と、家族の思い出をお話しされていました。
利用者さんは、歩くことが困難でトイレ以外はほぼベッドで過ごしていますが、食に対してこだわりがあるようです。
いつもは同居している娘さんが昼食用に前日の残りなどを用意してくれています。しかし、その日は食材しかありませんでした。
以前、味噌鍋のエピソードを聞いていたので、「しめじ、白菜、焼き豆腐、豚肉が残っているので、具たくさんの味噌汁でも作りましょうか?」とお尋ねすると、利用者さんの表情は曇り「昨日は鍋だったんだろう……僕も食べたかった……」と不服そう。
娘さん夫婦とは夕食のタイミングが別なので、メニューも違ったようです。
「でしたら、鍋っぽくしましょうか」と提案すると、すごく嬉しそう。「水炊きもいいな……ポン酢で食べたい」「でもやっぱり味噌がいいかな……」などと、イキイキした表情に。
相談した結果、水炊き風の昼食に決まりましたが、ベッドから降りて調理の様子をのぞきに来るほど楽しみにされていました。
その嬉しそうな表情を見て、ヘルパーをやっていてよかったな、としみじみ思いました。
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