寒さが厳しくなる冬本番、高齢者が体調を崩してしまいがちな季節です。
冬はインフルエンザやノロウイルス、ヒートショックなどに注意が必要ですが、意外なところで脱水が起こる可能性もあります。
それに加えて、今年は昨年に引き続き新型コロナウイルスが猛威を振るい、高齢者は気が気でない日々を送っていることでしょう。
高齢者は少しの油断から重篤化するケースもあるため、普段の生活の中でしっかりと対策を講じておきましょう。
今年の冬は新型コロナとインフルエンザのダブル流行が懸念されていましたが、手洗いやマスクなどといったコロナ対策の効果もあり、インフルエンザの患者数は例年に比べると大幅な減少傾向(*1)にあるようです。
しかし寒さが続く冬、新型コロナウイルスの感染者数が増加しています。
高齢者は免疫力の低下から容易に感染症にかかるリスクがありますし、新型コロナはときに生命を脅かします。特に高齢者は十分な感染予防の必要があるといえるでしょう。
新型コロナの初期症状は風邪やインフルエンザとよく似ており、咳や発熱、頭痛、倦怠感などが生じます。また、味覚・嗅覚障害といった別の症状が出ることもあります。
一方で、インフルエンザは38度以上の高熱が出るのが特徴です(*2)。
ただしどんな症状であれ自己判断は危険です。発熱など体の不調があれば、できるだけ早くかかりつけ医に相談しましょう。
新型コロナやインフルエンザなどのウイルスは、咳やくしゃみなどの飛沫に含まれて広がっていきます。飛沫を直接吸い込む、また、飛沫のついた手で口や鼻をさわることで感染してしまうのです(*3)。
特に空気が乾燥する冬場は飛沫が遠くまで拡散されやすくなるため、感染リスクも高まります。
多くの人が実践していると思いますが、飛沫を体内に入れないよう外出時にはマスクを着用し、こまめな手洗いやアルコールでの手指消毒を心がけましょう。
また、冬場は寒さのために室内の換気が不十分になりがちです。特に体調を崩すと重篤化しやすい高齢者は、多くの人が集まる換気が不十分な場所は避けるのが賢明といえます。
脱水症は汗をかきやすい真夏のイメージが強いかもしれませんが、冬にも脱水症は起こります。
夏場の脱水症は、大量に汗をかいて体内の水分量や塩分が不足してしまうのが一番の原因です。
一方、冬は夏ほど一気にたくさんの汗をかくことはありませんが、体の中の水分は排泄や呼吸、皮膚からの発散などによって失われていきます。
冬場は空気が乾燥しやすく、室内では暖房器具の使用によってさらに湿度が下がることも、水分が失われる原因のひとつです。
体内の水分が外に出ていきやすい環境によって知らず知らずのうちに脱水してしまうのが、冬場の脱水症の特徴となります。
夏場は熱中症対策などで水分補給を心掛ける高齢者も多いですが、冬場は摂取量が少なくなりがちです。
寒い季節でも意識してこまめな水分摂取を心掛けるとよいでしょう。
冬の入浴時に注意したいのがヒートショックです。ヒートショックとは、急激な温度変化によって生じる血圧の変化で引き起こされるショック症状のこと。
特に高齢者に起こりやすいといわれています(*4)。
ヒートショックは入浴時の発生が多く、その理由として脱衣室や浴室内の室温の低さがあげられます。
暖かい部屋から寒い脱衣場や浴室に移動すると、寒さで血管が収縮して急激に血圧が上がります。そこで寒いからと熱い湯船につかると、今度は収縮した血管が開き始めて血圧が下がってしまいます。
高齢者はこの急激な血圧の乱高下に体が適応できず、最悪の場合は心筋梗塞を発症して死に至ることもあるのです。
対策としては、家の中の温度差をできるだけ少なくするのがベストです。
一般的にトイレや浴室などといった場所は暖房を使用しにくく、冬場は非常に寒い環境になりがちです。
ヒートショックを起こさないためには、電気ヒーターを利用する、浴室はシャワーで温めておくなどして、大きな温度差が生じないように注意しましょう。
食中毒は気温の高い夏のイメージが強いかもしれませんが、冬に流行するのがノロウイルスです。二枚貝などの食材や、ウイルスの付着した手指から感染が広がっていきます(*5)。
主な症状は、吐き気やおう吐、腹痛、微熱などで、重症になるとおう吐を繰り返して脱水症を起こすこともあります。
高齢者はおう吐したものを誤嚥して窒息する危険もあるため、そういった点からも注意が必要でしょう。
予防には、食材をしっかりと加熱する、調理機器を消毒する、トイレを流す際にはふたを閉める、手洗いを心掛けるなどが有効です。
ノロウイルスは吐物に含まれるほか、症状が治まったあとも1週間ほどは便から排出されます。家庭内などで感染症が広がらない対策が必要でしょう。
寒い冬の季節は、環境を整えて高齢者の健康を守りましょう。
高齢者は免疫力が低下しているため、新型コロナやインフルエンザに注意するのはもちろん、風邪にも気をつけなければなりません。
風邪は万病の元と言われるように、少しの油断から大きく体調を崩しかねません。
外出時には帽子やマフラーを着用する、吸湿性の良い衣類を重ね着する、それを脱ぎ着してその時々で調整するなど、冬場は寒さ対策を万全にしておきましょう。
冬の空気の乾燥は高齢者の隠れ脱水やウイルス拡散を招きます。
室内には加湿器を置いて湿度を50~60%に保つと、これらの予防になるでしょう。
また、コロナ対策で着用の必要性が訴えられているマスクも、ウイルス性の感染症予防になるだけでなく、呼気に含まれる水分の放出をマスク内にとどめるので、気道の乾燥予防になります。
冬場の体調維持には、食事内容に気を配ることも大切です。
寒さで体温が下がると、代謝が下がり免疫力が低下するため、体を温めてくれるようなメニュー選びが大事になります。
大根やニンジンなどの根野菜や旬の食材など、たくさんの種類をバランスよく摂取するように心掛けましょう。
高齢者にとっての冬の寒さは、体への負担が大きいだけでなく、感染症や脱水症のリスクも増やします。
冬場の予防対策を万全にするのはもちろん、発熱や風邪症状など気になる体調の変化が見られたときには、早めにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
参考
*1 インフルエンザの流行状況(東京都 2020-2021年シーズン)[東京都感染症情報センター]
*2 新型コロナ(COVID-19)とインフルエンザの比較[深見医院]
*3 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)[厚生労働省]
*4 ヒートショック 特に高齢者は注意[STOP!ヒートショック]
*5 ノロウイルスに関するQ&A[厚生労働省]
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