訪問介護の利用者さんに「タコちゃん取って!」とお願いされたものの、なんのことか悩むヘルパー。
よくよく話を聞いてみると……? 高齢者にはステキなネーミングセンスがあるようです。
多くの高齢者は独特の言い回しを持っています。
「実は方言だった」というケースもありますが、高齢者の方々は新しい言い回しを作り出すのがお得意なんです。
私はこれまで、施設・通所・在宅とさまざまな介護サービスの現場で働いてきましたが、高齢者のオリジナルワードがもっとも多く出てきたのが訪問介護でした。
今も訪問介護で働いてますが、例えば足に着ける装具を「防具」と言ったり、杖を「相棒」と言ったり。
ちょっとクスッとほほ笑んでしまうような独特の言い回しが皆さんお好きです。
一度だけ、女性利用者さん宅でのサービス中に、福祉用具の担当者が来られたことがありました(漫画では少し脚色しています)。
いつもは訪問介護サービスの時間とずらしているのですが、その日は前の方が話し込んでしまい時間が押してしまったんだそう。
その女性利用者さんは2~3か月ほど前に大腿骨を骨折してしまい、歩行が不安定でした。
当時よりもずいぶん歩行が安定してきたので、それまで使用していた歩行器をやめて、もっと軽いシルバーカーや4点杖(多点杖)に変更しようというお話がケアマネからあったのでした。
新しい福祉用具を楽しみにしていた利用者さん。私そっちのけで用具についての説明を聞いて、実際に持ってきたシルバーカーを押してみたりしていました。
「どうですか?軽すぎると感じるかもしれませんが……」と福祉用具専門員が聞くと、「大丈夫!すいすい進めるわ~この“コロコロ”!」と早速オリジナルの呼び方をしていました。
シルバーカーを試したあとは4点杖。こんなの見たことない!といった表情でしばらく眺めていました。
それから「これはタコやな!タコちゃん!」と笑顔で名称変更されていて、福祉用具の方も笑っていましたっけ。
どの道具にも正式名称があるのですが、高齢者のオリジナルな言い回しを訂正する職員はほとんどいません。
そして慣れてくると言い回しが互いに通じるようになり、それが定着。
まるで長年連れ添った夫婦のようにやり取りしているのですから、きっと周りからは不思議に見えるかもしれません。
しかしツーカーで意味が通じるのはそれだけ関われている証拠。利用者と介護士のいわゆる「なじみの関係」を表しているのだと思います。
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