「正月はつまらない」とため息をつく訪問介護の利用者さん。一人暮らしや家族と疎遠になっている高齢者にとって、お正月は特に寂しさを感じやすいのかもしれません。
そんな高齢者にとってはヘルパーが特別な存在だったようで……?
多くの方にとって楽しいお正月。お子さんやお孫さんが遊びに来る方は「疲れた。でも孫の顔が見られてよかった」と笑顔ですが、なんだか寂しい様子の訪問介護の利用者さんも少なくありません。
独り身や家族と疎遠になっている方も多く、お正月ムードで周りが賑やかになると、そのような方は押し寄せる寂しさにひとりで向き合わなければならないからだと思います。
ある男性の利用者さんは、奥さんも子どももなくずっと独り身でした。骨折をきっかけに筋力が低下してしまい、ゴミ捨てなどの家事もできなくなったことから私たちヘルパーが生活の支援をしています。
お正月に訪問すると「来たんか」とぶっきらぼうな様子。でもいつもよりちょっと嬉しそうです。
その後も掃除をしている私に、とぎれとぎれに話しかけてくれました。年末ジャンボや箱根駅伝、お笑い番組などの他愛のない話です。
いつもだったらひとりでタバコを吸っているか新聞を読んでいるかのどっちかですが、ちょっとウキウキしています。お正月に誰かがいるのが嬉しかったのかもしれません。
私が帰る時間になったころ、なんとなく恥ずかしそうに口を開きました。「今年もあんたが(家事をしに)来るんか?」と、初めて見る表情です。
特に予定の変更もなかったので「その予定です」と答えると、「そうかそうか」と嬉しそう。紙パックのお酒を持ってきて「じゃあ年明けのお祝いに杯交わすか!」とニッコニコです。
私が来るのを楽しみにしていただけ、この方の訪問を今年も続けていきたいなと思いました。
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