長い人生を歩んできた高齢者には、意外な過去がつきものです。
ある訪問介護の利用者さんが犬好きになったのも、過去の出来事がきっかけでした。
訪問介護のサービス中には、利用者さんからよく昔話を聞きます。
思い出話の多くは苦労話です。戦争中、兄弟が8人もいるのに食べ物も着る物も不十分だった、家の仕事を手伝わねばならず学校に行けなかった……など。
気が重くなるような話も多いのですが、徴兵された先で新たな発見をされた方がいました。
98歳の男性利用者さんは、関節が弱いのですが杖があれば一人で歩くこともできます。
若かりし頃、徴兵を受けた利用者さんは家族に心配されながら隊へと足を運んだそうです。なぜなら彼は生まれつき呼吸器が弱く、環境が変わると熱を出してしまう体質だったから。
配属された先でも熱を出して、それが何日も続いたそうです。そして、ついには訓練を受けさせてもらえませんでした。
当時は「国に尽くす」ということが何より素晴らしいとされていたので深く傷ついたのだとか。
ですが体の弱い利用者さんにも任務が与えられました。それが軍用犬の訓練です。偵察、追跡、地雷の探知など、第二次世界大戦では多くの軍用犬が活躍していたそうです。
当時、利用者さんは犬がそんなに好きではありませんでした。しかし国のために訓練を学び、多くの軍用犬と関わるうちに、犬に対する愛情が芽生えたそうです。
「他の隊員になつかない気難しい犬も、なぜかワシには懐いてくれる」と不思議そうに語られていました。どうやら最初から軍用犬の訓練士としての素養があったみたいですね。
敗戦後も犬を飼い続け、犬と共に人生を歩んできた利用者さん。今は飼うのが大変になったので息子さんに預けていますが、親族そろって愛犬家だそうです。
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