技術革新で医療・介護現場をどう変えるか 厚労省・経産省、2040年の検討開始

技術革新で医療・介護現場をどう変えるか 厚労省・経産省、2040年の検討開始技術革新で医療・介護現場をどう変えるか 厚労省・経産省、2040年の検討開始

WGで挨拶する根本厚労相 25日

2025年の次の未来、2040年を見据えた医療・介護のあり方をめぐる議論が本格化している。厚生労働省と経済産業省が25日、共同で「未来イノベーションWG」を始動させた。

急速な進化を遂げるAIやロボット、IoTなど第4次産業革命のテクノロジーをどう実装していくか? 社会構造が大きく変容していく今後、維持・実現していくべき価値観は何か? 

WGでは今後、そうした大きなテーマを有識者とともに掘り下げていく。3月にも報告書を出す。厚労省はそれを、来夏にまとめる新たな「医療・福祉サービス改革プラン」に反映させる計画。経産省は研究開発戦略の策定、ムーンショット型プロジェクトの立ち上げ、民間投資の活性化などに活かす考えだ。

根本匠厚労相は会合で、「前例のない高齢化、人口減少を前に医療・介護現場の革新を通じた生産性の向上が急務」と挨拶。「より長期的な視点に立って、人と先端技術が共生する未来社会を展望したプランを作っていく」と述べた。
 

「将来へ大きな一手を」

2025年以降、日本は“高齢者の急増”から“生産年齢人口の急減”に局面が移っていく。今からおよそ20年後の2040年には、高齢化率が35%まで上昇。高齢者1人に対して現役世代は1.5人となっている。単身世帯は全体のおよそ40%まで増え、最大の世帯類型となる見通しだ。医療・介護ニーズが爆発する大都市、いわゆる「スポンジ化」が進む地方都市、存続そのものが危ぶまれる集落 − 。顕在化する課題は地域によって違ってくる。

アジア経済の中心はさらに日本の外へ動く。優秀な人材が外国へ出ていく傾向が強まる可能性も否定できない。若返りが進む高齢者の就業率は上がり、在留外国人も増加していくと推計されているものの、アジア各国の高齢化が進んで人材の“取り合い”も一段と激しさを増す。マンパワーに厳しい制約がかかるのは明らかで、国の財政にも余裕はまったくない。

求められる医療・介護サービスを持続的に、都市でも地方でも格差がない形で、公平・平等に提供していくにはどうすべきか?

厚労省の担当者は、「イノベーションの力を借りないとケアの質を維持・向上していけない、という危機感がある。将来に向けて大きな一手を打たなければいけない時期に来ている」と話す。経産省の担当者も、「技術の力を使ってジャンプしたい。両省で課題解決の議論を進めていく」としている。

「イノベーションの起点は現場」

WGでは今後、2040年にかけて目指していくシステムの理想的な将来像を構想したうえで、それを実現するための具体的なアプローチを整理していく。AI、ロボット、IoT、ICT、センサー、自動運転などが進化・普及し、暮らしの中に溶け込んでいる社会を想定して検討を深める。

厚労省と経産省で作る事務局はこの日の会合で、「変化を迎えてもなお維持していくべき医療・介護の価値観」として、

○ 個々の活躍・生きがいを支える

○ 個人の選択を尊重する

○ 家族や医療・介護職に過大な負担を押し付けない

○ 医療・介護への柔軟なユニバーサルアクセスの運用

○ 働く人が誇りと見通しを持てる

などをあげた。ダイバーシティがさらに高まり、標準的な人生設計が徐々に消滅していくことも念頭にあるとした。

「イノベーションの起点はあくまで現場。現場は可能性を秘めたフロントライン」。そうした認識も示した。このほか、周囲に相談できる先輩・同僚がいない介護職でも無理なくキャリアを形成できるようにすること、介護領域を志す人材のチャレンジを歓迎する風土を構築していくことなども、議論の重要な視点に位置づけている。

提供元:介護のニュースサイトJoint

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