2021年度に控える次の介護保険制度の改正に向けた協議を重ねている厚生労働省は16日、利用者の自己負担割合を現行のまま維持することに決めた。一方、月々の自己負担の上限額は高所得層を対象として引き上げる方針だ。
社会保障審議会・介護保険部会で意向を示した。来週にまとめる審議報告に盛り込む。
自己負担割合の引き上げは、右肩上がりの給付費の抑制を図りたい財務省や経済界などが強く実現を求めてきた経緯がある。
一方、利用者団体などは「生活が立ち行かなくなる」などと強く反発。「サービスの“利用控え”が増えてかえって利用者の重度化を招く」といった批判も広がり、次期改正をめぐる最大の焦点となっていた。
結局、政府・与党は現場の関係者の慎重論に配慮した決断を下した。
この日の介護保険部会では、保険料を負担して制度を支える現役世代や企業の立場を代表する委員から、「踏み込み不足」「非常に残念」といった失望の声が相次いだ。今回はひとまず見送ることとされたが、この論争はそう遠くない未来に再び熱を帯びる可能性が高い。
厚労省は今回、高額介護サービス費(*)の上限額を見直す方針も決めた。対象は年収が約383万円以上など現役並みに所得がある利用者だ。
* 高額介護サービス費
ひと月に支払った自己負担の合計額が、あらかじめ定められている上限額を上回った場合に、その超過分を後から払い戻す制度。自己負担が過重となって利用者の生活を追い込むことのないようにする仕組みだ。ひと月の上限額は現在、年収などに応じて4段階で設定されている。
「現役並み所得」の区分は現行で1つだけ。厚労省はこれを3つに細分化し、より年収が高い層の上限額を引き上げることとした。具体策は以下の通り。赤枠の中が見直される部分だ。
こうした見直しは、医療保険制度の同じ仕組み(高額療養費)の上限額を踏襲したもの。介護保険部会のこれまでの議論では慎重論もあったが、「負担能力のある人はできるだけ負担して欲しい」との声も少なくなかった。
関連記事
新着記事