昨年10月から導入した介護職員の特定処遇改善加算について、厚生労働省は来年度の介護報酬改定に向けて事業所内の配分ルールを緩和する方向で詰めの調整を進めている。【青木太志】
「経験・技能のある介護職員」の平均賃上げ額を、「その他の介護職員」の平均賃上げ額の2倍以上にすること、という現行ルールを見直す。「2倍以上にすること」から「より高くすること」へ弾力化する。
事業者の自由度を高めて活用しやすくする。算定率の向上にも寄与すると見込む。加算の趣旨を維持する観点から、残りのルール(*)は存続させる。
* 月8万円の賃上げとなる人、あるいは賃上げ後に年収が440万円を超える人を1人は設定しないといけない、とのルールは存続。「その他の職種」の平均賃上げ額が、「その他の介護職員」の平均賃上げ額の2分の1を上回らないこと、とのルールも存続。
11月26日に開催した社会保障審議会・介護給付費分科会で提案した。一部の委員からは慎重論も出ており、引き続きすり合わせを重ねる。年内には方針を決定する。
特定処遇改善加算は、深刻な人手不足の解消に向けた国の施策の重要な柱。勤続10年以上の介護福祉士など、「経験・技能のある介護職員」の賃上げを優先させる点が大きな特徴だ。
現場で長く頑張ってもなかなか給料が上がっていかない − 。そうした業界の状況を改め、将来像をもっと描きやすくすることを重視して設計された経緯がある。新規参入の増加や離職の防止につなげる狙いだ。
厚労省によると、最新データの今年6月の算定率は65.5%。依然として3分の1を超える事業所が取っていない。より低調に留まっているサービスもあるのが実情だ。
現場の関係者の間では、「事業所内の賃金バランスをうまく保てない」「ルールが多くて複雑」などの不満が多い。厚労省は今回、加算本来の目的がブレないよう配慮しつつこうした声に応える形。
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