社保審・介護給付費分科会|11月16日
厚生労働省は16日、来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会介護給付費分科会)で、施設・居住系サービスを俎上に載せた。【Joint編集部】
緊急時など医療ニーズへの対応力を強化する方策を論点として提示。在宅医療を支える地域の医療機関との実効性ある連携体制を、要介護の高齢者が暮らす現場で幅広く構築してもらいたい考えを打ち出した。
そのうえで、介護保険3施設(特養・老健・介護医療院)、特定施設、グループホームについて、次のような義務、または努力義務を課す案を示した。
介護保険3施設や特定施設、グループホームは今も協力医療機関の指定を求められているが、その運用実態はまちまちだ。なかには、要介護者の医療ニーズと必ずしもマッチしない機能の病院を指定していたり、連携が形骸化していたりするケースもあると指摘されている。
厚労省は今回、「在宅医療を担う医療機関、在宅医療を支援する地域の医療機関との実効性ある連携体制の構築」を進めたいと説明。担当者は会合で、連携先の協力医療機関について、「例えば『在宅療養支援病院』などが有力候補となるが、医療機関の類型を限定するというよりも、地域の中で必要な機能を相談して対応して頂く形を想定している」と説明した。
このほか、利用者の現病歴などの情報を協力医療機関と共有する会議の定期的な開催を評価することも提案。あわせて、
◯ 1年に1回以上の頻度で、協力医療機関と緊急時の対応などを確認し、その医療機関名を指定権者へ届け出ること
◯ 利用者が協力医療機関へ入院した際に、病状が軽快したら速やかに再入所できるよう努めること
なども現場に要請してはどうかとした。
会合では、施設・居住系サービスの医療体制を強化するという大きな方向性を大半の委員が支持。ただ、その手法をめぐっては異論が噴出した。
全国町村会を代表する山口県玖珂郡和木町の米本正明町長は、協力医療機関の指定の義務化について、「規模の小さな町村では医療機関の数、地域の医療資源が限られ、要件を満たす連携体制をどうしてもとれない施設がある。地理的条件、地域の特性も考慮して細部を考えてほしい」と要請した。
全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「介護施設が全ての地域で医療機関と連携協定を結ぶのは不可能。要件も厳しく、既存の協力病院との契約が継続できなくなる恐れもある」と問題を提起。「1年間の経過措置を設けたとしても、義務化は急ぎすぎ。運営基準違反を問われる施設が多く出るのではないか。まずは努力義務とし、環境が整うまで段階的に進めていくべき」と主張した。
このほか、全国知事会を代表して参加した長崎県の担当者(知事に代わり参考人出席)は、「医療機関側に協力を促す仕組みも整備する必要がある」と提言。日本医師会の江澤和彦常任理事は、「特定施設やグループホームでも今後、介護施設と同様の取り組みを進めていくべき」と促した。
厚労省は年内にも大枠の方針を固める予定。今回の委員の意見も踏まえ、具体化に向けた検討を更に深めていくとしている。
関連記事
新着記事