来月からいよいよ訪問看護の報酬改定が施行される。
施行時期はこれまで4月だったが、今年度から6月へ変更された。厚生労働省が現場の事務負担などを考慮し、診療報酬改定も介護報酬改定も2ヵ月後ろ倒しにした経緯がある。
ここでは訪問看護の介護報酬について、新たに創設されたり拡充されたりする加算をまとめていく。メニューは全部で6つだ。【Joint編集部】
1. 専門性の高い看護師によるサービスの評価
医療ニーズの高い利用者が増えていることを踏まえ、専門性の高い看護師が計画的な管理を行うことを評価する新たな加算を設ける。
専門管理加算=250単位/月(新設)
〜 算定要件 〜
◯ 緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師が、計画的な管理を行った場合に所定単位数に加算する。
◯ がんの鎮痛療法・化学療法を行っている利用者、真皮を越える褥瘡の利用者、人工肛門・人工膀胱を造設していて管理が難しい利用者などが対象。
2. 看護師による退院当日の訪問の推進
利用者のより円滑な在宅移行を推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを新たな区分で評価する。
<現行>
初回加算=300単位/月
<改定後>
初回加算(I)=350単位/月(新設)
初回加算(II)=300単位/月
〜 算定要件 〜
◯ 加算(I)
訪問看護計画書を新規に作成した利用者に対し、病院、診療所、介護保険施設から退院・退所した日に看護師が初回の訪問を行った場合に、1ヵ月につき所定単位数を加算する。加算(II)を算定している場合は対象外。
◯ 加算(II)
訪問看護計画書を新規に作成した利用者に対し、病院、診療所、介護保険施設から退院・退所した日の翌日以降に初回の訪問を行った場合に、1月につき所定単位数を加算する。加算(I)を算定している場合は対象外。
3. ターミナルケア加算の見直し
介護保険のターミナルケアの内容が医療保険のターミナルケアと同様であることを踏まえ、ターミナルケア加算の評価を引き上げる。
<現行>
ターミナルケア加算=2000単位/死亡月
<改定後>
ターミナルケア加算=2500単位/死亡月(拡充)
〜 算定要件 〜
変更なし
4. 情報通信機器を用いた死亡診断の補助の評価
離島などで暮らす利用者の死亡診断について、診療報酬の対応との整合性を図る観点から、ターミナルケア加算を算定し、看護師がICTを用いて医師の死亡診断の補助を行った場合の評価を新たに設ける。
遠隔死亡診断補助加算=150単位/回(新設)
〜 算定要件 〜
在宅でのICTを用いた看取りに係る研修を受けた看護師が、診療報酬の「死亡診断加算」などを算定する利用者の主治医の指示に基づき、ICTを用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に所定単位数に加算する。
5. 口腔管理に係る連携の強化
利用者の口腔状態の確認によって、歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげる観点から、事業所と歯科専門職との連携のもと、看護師らによる口腔衛生状態、口腔機能の評価の実施、歯科医療機関、ケアマネジャーへの情報提供を評価する新たな加算を設ける。
口腔連携強化加算=50単位/回(新設)
〜 算定要件 〜
◯ 事業所の職員が、口腔の健康状態の評価を実施した場合に、利用者の同意を得て、歯科医療機関、ケアマネジャーに対し、その評価結果を情報提供した場合、1月に1回に限り所定単位数を加算する。
◯ 事業所は利用者の口腔状態の評価を行うにあたって、一定の実績がある歯科医療機関の歯科医師、歯科衛生士に相談できる体制を確保し、その旨を文書で取り決めていること。
6. 24時間対応の体制の充実
緊急時訪問看護加算について、訪問看護の24時間対応の体制を充実する観点から、夜間対応する看護師らの勤務環境に配慮した場合を評価する新たな区分を設ける。
<現行>
◯ 緊急時訪問看護加算
訪問看護ステーションの場合=574単位/月
病院・診療所の場合=315単位/月
<改定後>
◯ 緊急時訪問看護加算(I)
訪問看護ステーションの場合=600単位/月(新設)
病院・診療所の場合=325単位/月(新設)
◯ 緊急時訪問看護加算(II)
訪問看護ステーションの場合=574単位/月
病院・診療所の場合=315単位/月
〜 算定要件 〜
◯ 緊急時訪問看護加算(I)
次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1)利用者・家族からの連絡で看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること。
(2)緊急訪問の業務負担の軽減に資する十分な業務管理などの体制の整備が行われていること。
◯ 緊急時訪問看護加算(I)
上記(1)に該当すること。
新年度の訪問看護の介護報酬改定ではこのほか、BCP(業務継続計画)が未策定の事業所や虐待防止措置が未実施の事業所に対する基本報酬の減算も導入される。
ただ、BCP未策定の減算には一定の経過措置が設けられた。来年3月31日までの間に限り、訪問看護を含む訪問系サービスは適用免除の取り扱いとなっている。