「社会から離れてしまい、うつ状態になっている」「歩く力が衰えてしまった」。自由記述欄にはそうした報告が多く寄せられている。【青木太志】
新型コロナウイルスの流行に伴う介護サービスの利用控えにより、高齢者の心身機能が低下したケースが「ある」と答えた介護職が6割超にのぼっていることが、淑徳大学の結城康博教授が実施したアンケート調査で明らかになった。
「機能低下のケースはかなり多い」が4.6%、「機能低下のケースは多い」が16.3%、「機能低下のケースは多少ある」が41.4%。これらをあわせると62.3%だった。外出、運動、コミュニケーションなどの機会が減ったことが要因。
このほか、「なんとも言えない」が19.9%、「機能低下のケースはほとんどない」が15.9%となっている。
この調査は、今月4日から17日にかけてインターネットを通じて行われたもの。ケアマネジャーや介護職員、相談員、看護師など、介護の現場を支える503人から有効な回答を得たという。
それによると、コロナ禍でサービスの利用を控えている高齢者が「いる」と答えた人は、全体の8割を超える82.3%。「多くいる」が11.1%、「一定程度いる」が38.8%、「僅かにいる」が32.4%だった。
自由記述欄をみると、「認知症の症状が悪化している」「以前より情緒不安定になった」「不穏な状態が続いている」など、主に精神面の影響に関する書き込みも非常に多かった。「今のところ心身機能の低下は限定的だが、この状況が長引けばより顕在化していく」との声も少なくない。また、「ご家族も疲弊している」「介護ストレスから虐待も起きている」との記載もあった。
調査結果を分析した結城教授は、「利用控えによる影響はかなり深刻な状況。個々の高齢者の状態に合ったきめ細かいサービスを、感染リスクをできるだけ低く抑える形で提供していく必要がある」と指摘。「ただし、介護現場は人材も物資も完全に不足しておりそうした余力がない。国は事業所や職員への支援を大幅に拡充すべき。急がないと問題は更に大きくなっていく。緊急事態宣言を解除した後の重点課題の1つだ」と話している。
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