介護福祉士の国試義務化、5年間先送り 関連法が成立

介護福祉士の国試義務化、5年間先送り 関連法が成立介護福祉士の国試義務化、5年間先送り 関連法が成立

参院厚労委で答弁する安倍首相 4日

地域共生社会の実現や介護サービス提供体制の強化を掲げた社会福祉法、介護保険法などの改正案が5日、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。【青木太志】

介護福祉士の養成校を卒業した人に対する国家試験の義務付けについて、既存の経過措置を延長する形で5年間先送りすることも盛り込まれている。これで正式決定。青写真として描かれた“資格取得方法の一元化”は大きく後退した。野党側は反対したが、政府は外国人留学生の増加などを理由に押し切った。

■ 養成校の経営にも配慮

介護福祉士の資格取得方法をめぐっては、人材の資質や社会的な評価を高める観点から見直しが図られてきた経緯がある。

大学や専門学校などで学ぶ「養成校ルート」は以前、現場でスキルを磨く「実務経験ルート」と違って国試を受ける必要がなかった。厚生労働省は2017年度から、「養成校ルート」の人にも国試を求めていくルールへ変更。5年間の経過措置を設け、2022年度から完全実施するスケジュールを定めていた。一定の教育課程を修了した後で国試をクリアする、というプロセスへ早期に一元化すると説明していた。

今回の改正法では、この既存の経過措置を2026年度まで更に5年間延長する。最大の理由は留学生の増加だ。今や養成校に入学する人の約3割(2019年度)を占めており、今後も増えると期待されている。

大半の留学生にとって国試はハードルが高い。予定通りに義務付ければ多くの貴重な戦力を母国へ帰す結果を招く、という懸念の声が現場の関係者からあがっていた。また、留学生が来なくなってしまうと養成校の経営は壊滅的な打撃を受けることになる、との指摘も少なくなかった。

野党側は国会審議の中で、「介護職の社会的な評価の向上を妨げる」と政府を批判。処遇改善によって介護職を志す人を増やしたり、留学生へのサポートを手厚くしたりする道を選ぶべきと繰り返し訴えたが、政府が立場を変えることはなかった。

安倍晋三首相は4日の参院・厚労委員会で、2027年度から円滑に国試を義務化できるよう留学生などへの支援に力を入れると答弁。「介護職の社会的な評価を高め、介護職を目指そうと思う人を増やしていくことは大変重要な課題」とも述べ、引き続き具体策を検討していく構えをみせた。

今回の改正案にはこのほか、介護、障害福祉、子育て支援、生活困窮者支援といった分野を超えた横断的な相談体制の整備に向けて、市町村などが関連予算を一体的に使える新たな仕組みを導入することも含まれている。地域の福祉ニーズが多様化、複雑化、複合化している現状に対応することが狙い。今後、市町村や現場の関係者を後押しして取り組みを普及、発展させていくことが課題となる。

提供元:介護のニュースサイトJoint

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